平田と熊本に行く途中、都市高速に乗る直前、「ギャー、なにこれ、ワーワー、止めてくださいーーー。」女みたいな涙声で平田が、訴えてきたのでふと見ると、ダッシュボードの隙間から、ムカデがくねるように出てきていました。車を止めると、すぐ外に逃げ出し、「もう、びっくりするー、かんべんしてください。刺されると腫れて痛い虫は苦手なんです。ゴキブリは平気ですけど。なんとかしてください。」今ゴキブリの説明はいらないと思うのですが、なぜか私に怒り口調です。ダッシュボードのものをすべて出して、探しましたが、どこかの隙間に逃げたようで見つかりません。いやいやながら再び車で高速に乗りました。「もう信じられませんよ。社長の家の山から連れてきたんですよ。西新にはあんなでかいのはいません。すごく大きくて元気良かったですもん。あんなのに刺されるとたまらんですよ。高速で出たら止めて逃げられないんですよ。」じーとダッシュボードあたりを監視しながらしゃべり続けてます。「ムカデも同じようにでかい二人にびっくりして逃げ隠れたかもしれんぞ。」・・・・・睨んでこちらを見るだけでいつもの返しがありません。基山パーキングのコンビニで殺虫剤を探しましたが当然高速で殺虫剤が必要な人などいませんからありません。平田は熊本まで緊張して珍しく寝ないままでした。熊本でキンチョールを買い、車の中にふりましたが、いまだ発見されません。帰りのドリンクホルダーはキンチョールの缶とケープスーパーハードの缶が並んでおいてあります。変な車です。しばらくすると、運転席側の窓のプラスティックの庇の金物が取れて、パタパタとあおり始めました。「おーーーー。怖い。折れて後ろの車にあたると大変なんで止めてガムテープでとめましょう。」高速です。止めるわけにいかず、そうこうしているうちに、バキッという音とともに折れて飛んでいきました。「ワーー。どうしたとこの車、今日変。」騒ぎすぎたのか、ムカデ事件は忘れたのか、帰り鳥栖あたりからの助手席は口をあけて爆睡するいつもの平田がいました。今、中村は体調が本調子でなく、あまり元気がないのですが、女性らしく、おとなしく、言葉づかいも上品で静かです。「大人の女」という感じです。元気で、食事もきちんととれば以前に戻らず、このままがいいのですが……。長いこと「ちょっと待て。」「そりゃいかんやろ。」「ちっちぇー男やなー」吐き捨てるような中村節を聞いてません。ときどきは聞いてみたい気がするのも事実です。