商売と事業

わたしは田舎の商売家で生まれ育ちましたから、家族、親戚、男女問わず皆、忙しく働いてました。家族団らんの夕食などありませんでした。役職や地位も別になく、皆が汗水流していました。自然と田舎商売のやり方みたいなものを学び、身についたように思います。大人になり、はたらきはじめ、ビジネスとか事業という言葉が聞こえてきました。「事業計画」「システムの構築」「作業の効率化」「節税」「中長期計画」「社会貢献」・・・・さまざまな業種で成功者と呼ばれる人たちの考え方や言葉が取り上げられます。「忙しい会社は儲けない」「残業が多い会社は儲けない」「きちんと休みなさい。」というアドバイスも多いようです。この会社をはじめるとき俗に言う偉い人に沢山アドバイスを受けました。数社の大手住宅会社社長や役員、大手の建材メーカー社長、ゼネコンの役員、銀行の支店長、弁護士・・・・・・。自分の心に響き、エネルギーをもらえることはありませんでした。「そういうもんかー。」と勉強はさせていただいたのですが・・・。頭悪いので「事業」はできないと思いました。お袋や、おばから学んだ商売の考え方が、わたしには「正論」でした。仕事ができるようになるまでは、修行たい。休んだらいかん。ひとのために動きまわっていたら、仕事のほうからやってくる。お金は後ろからついてくる仕事が、本物よ。
今私がやっていることは、忙しく、正月以外無休で、効率は悪く、汗水流し、何もかも自己完結の「商売」です。そうしてやっとわずか利益が出ます。株主のための利益追求とか、資産とか、事業拡大とか、何一つ興味すらありませんし考えたこともありません。目指すは親父やお袋がやっていたみんながなくなったら困るといっていた「田舎商売」なのかもしれません。業種や場所は違っても私は小澤商店を継いだのかもしれません。住宅版、小澤商店を続けます。

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