人は不思議な行動をします。自分を主張し、自分と緊張関係にある時間のときは、空間の中央に位置し、相手と対面します。しかしくつろぎや、ゆったり感を必要としている時は、壁際に陣どります。レストランや、喫茶店で、中央付近の席より、窓際や壁際の席から埋まるのもそのせいだと思います。そう考えると居心地のよさを求められる住まいにおいて、「広ければ広いだけいい。」と言う概念は、まちがっていることになります。テラスでの食事も、2方や3方壁に囲われて、上には、パーゴラなんかがあったほうが落ち着くはずです。30帖や40帖のリビングの真ん中にあるソファーではくつろげないと言うことです。しかし、視線は遠くまであったほうが心地いいようです。そう考えると、リビング、ダイニング、キッチン、階段など必要な広さを間仕切らないで、エリアとして構成し、「視線の広がり」を確保してやることが大事なようにおもいます。勾配天井の吹き抜けで、上にも視線を伸ばしてやれれば最高です。くつろぎの家造りにおいて、広さとは面積ではなく視線のひろがりであり、居心地のよさと面積はけっして比例しない。建築家は小さい面積で、広さを感じられる良質の空間をおいもとめています。
K邸 2008年竣工 (Kunisaki Ohita)