商業化住宅

日本の住宅は戦前までは立派なものだったように思います。戦争に負け、早く、簡単に、大量に、合理的にということで工業化住宅というものが出現し、製品化されることで、家は建てるものから買うものへと移行していったわけです。そして、今は「建築士のプロデュースしたデザイナーズハウス」とか「お得感のある坪単価」を広告にのせることで、家を「売る」商業化住宅の時代だと感じます。古い考えかもしれませんが、私はいつまでもオーナーや職人さん達と膝をつきあわせて、鉛筆をなめながら「美しい家」を建てたいと思っています。私の力不足で適正な利益を上げる事はできていませんが、オーナーとスタッフと一緒に造った一邸、一邸はかけがえのない財産になっています。

2007 N邸

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夫のエリア、妻のエリア

できるだけ夫が一人で落ち着けるコーナーと妻が一人で落ち着けるコーナーを作りたいと思っています。部屋としてのスペースは取れなくても落ち着けるエリアは必要です。プライベートエリアを夫婦で持つことでリビング、ダイニングがより家族の空間として楽しいものになります。今の住宅はリビング、ダイニングに色々な役割を押し付けているような気がします。家族としての図書スペースやパソコンコーナーもリビング、ダイニングではなく、2階のホールや小屋裏スペースを利用して設けることができれば最高です。

2007 Y邸

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2008T邸

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間取り

住宅の設計をするとき「間取りを考える」という作業はあまり重要だとは思いません。映像として室内も外観も頭の中で作り上げるにはスケッチを繰り返すことです。自分の頭の中でできた住宅を人に知らせるための手段の1つとして平面図(間取り図)を作りますが、同時に外観デザイン、パース、模型等全て「三次元」として住宅を提案することが大切です。そして、それは同時進行で行われるべき作業だと思います。そうして造られた家はどの通りからも見え方が検証されており妥協のないデザインができあがります。室内においても居心地のいいバランスを味わえるはずです。「外観から間取りがわかる家」は間取りしか考えていない家です。外からあそこが風呂だ、キッチンだ、トイレだと判る家に美しい家はないはずです。

 

JUNE ,1998

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LULY,1998

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MODELS

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自然への責任

先日、仕事で久しぶりにやまなみハイウエイを走る機会がありました。天気もよく、雄大な自然を満喫したわけですが、残念なことにプレハブ住宅の別荘が多い事にかなりの違和感を覚えました。プラスティックやアルミで覆われた工業化住宅や企画住宅はデザインも素材も「自然」にそぐわないどころか罪かもしれません。大自然の中に建てさせていただくには、自然に対して最低限の責任を持たなければならないと思います。

2007年  Y邸

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世界一幸せな男

20年近く前にアメリカに行ったときのことです。世界一幸せな男は「アメリカの家に住んで、ドイツの車に乗り、日本の女性を妻にした男だ」という話を聞きました。アメリカ人らしい「夢」の表現ですが、時代背景もありその時は笑いながらも多少納得した覚えがあります。今、こんな時代だからこそ家に「夢」を持てるような作品を造らなければと考えています。ちなみにスタッフで画家のチャーリーも何年間か「世界一幸せな男」を経験したことがあります。それも一気に手に入れ一気に手放したようです。(ここは下川が付け加えた方がいいとアドバイスしてくれました)

C邸/2001年竣工

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カバードポーチ

私はカバードポーチのある家をよく提案します。九州では雨が多く、夏の陽も強い訳ですから軒が深い空間があることは風土的にもあっていると思いますしデザイン的にも陰影が家の表情を豊かにします。庇がかかり柱や手すりに囲まれた「半外部空間」はとても落ち着きます。ベンチでもおいて「休日に飲み物と文庫本」・・・お勧めです。便利でしょうが洗濯物は干さないで欲しいものです。

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主役は夜

例外を除いて住まいは殆ど夜が主役のような気がします。「夜が素敵な家をつくろう」とイメージすると、いろんな概念が変わります。太陽を追いかけることでむやみに大きな窓をつけられたり、あちこちに窓をつけて建物の表情を崩したりしなくなります。窓は入ってくる光も大切ですが出す灯りのバランスを考える方がもっと大切です。室内の灯りは暗めで良いと思います。天井からの灯りを最小限にしてブラケット照明やスタンドを主照明にすることをお勧めします。手塗りの壁のコテ跡に灯りがあたり優しい濃淡が浮き出てきます。木々は窓の近くに植えてライトアップすることで夜の庭が出来上がります。インテリアデザイナーの平田は「照明は素敵な影を作るためにつけるものだ」と言っています。

H邸 (北九州市)2000年

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たたずまい

住宅において最大級のほめことばは「いいたたずまいですね」という言葉だと思います。堂々としたたたずまい。おしゃれなたたずまい。かわいいたたずまい等、たくさんのたたずまいがありますがどれも造形が美しいことと、家と住み手が長年いい関係であること、そして、植物が不可欠です。具体的にいうと、「木漏れ日」「光と影」「窓からの黄色い光」「良質の経年変化」が必要です。良いたたずまいであり続けることは建築家とオーナーの目標であり、その責任はフィフティ・フィフティだと思います。

W邸 2000年

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暖炉のすすめ

2006年 M邸

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雪の降る夜、久しぶりに早く帰宅したので暖炉に火を入れました。

マキが燃える炎の灯りや匂い、パチパチという音全てが何にも代えがたい最高の「いやし」です。

世界の巨匠、フランク・ロイド・ライトや私が尊敬する吉村順三先生も暖炉をつけることを勧めています。

ライトは知性や「感性を向上させるものが暖炉だ」と言い、吉村先生は暖炉に「火を入れると空間をドラマチックに変える力がある」と言っています。

私にとっての暖炉は「心身ともに暖かくなるもの」・・・だと思います。

自然体で暮らす北向きの我が家

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会社のホームページを立ち上げてから私もブログを書くことになりました。

まずは築13年の自宅を紹介します。いまだにイノシシが頻繁に出没する山の中ですが、北側に博多湾や能古の島(のこのしま)が望めるところが気に入りシンプルな総2階建ての家を建てました。1階に主寝室と子供部屋2つ。洗面、トイレ、バスルーム。2階に40帖のリビング・ダイニング・キッチン・とバルコニーという構成です。2階の勾配天井にレッドウッドを貼ったことで訪れる人が「船の中みたい!」とおっしゃいます。父が船乗りで、子供の頃その船が遊び場だったことが潜在的にあるのかもしれません。 暖炉に火をいれて、パチパチというマキの燃える音を聞きながら博多湾に浮かぶヨットの白い帆を眺めて過ごす時間が一番くつろぎます。 「自然体で暮らす北向きの家」もなかなか快適ですがリクライニングソファは二匹のビーグル犬と娘に占領されています。

                                                     KOZAWA