インテリアのテーマ

平面図で見るとほぼ同じ形、同じ広さを持つ2つの家のリビングがあります。インテリアのテーマは1つの家がトラディショナル。もう1つの家がモダンです。床の仕上げがオークフローリングとカーペット。塗装がオイルステインとオイルペイント。その他、マントルピースの仕上げや天井の形状、ディティールの違いでそれぞれがテーマを完結しています。2つの家に訪れると全てのものや生活そのものがテーマを守って違和感なく見事に暮らしていらっしゃいます。「楽しくくらしています」という言葉をいただくと何より嬉しくなり、この言葉を一緒に造り上げた職人さん1人1人に届けたくなり、携帯電話に手をのばしてしまいます。

2003 S邸(熊本)

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2003 H邸(福岡市)

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ギャラリー

「好きなものに囲まれて暮らす家」というテーマをお持ちのオーナーがたくさんいらっしゃいます。家はある意味、その家族のギャラリーの役割も果すべきです。植物や花、陶器、絵、写真、書・・・等。チャーリーは画家としてだけではなく、完成した空間をギャラリーとしてディスプレイするプロでもあります。彼は「壁」をアートに変えます。空間を引き締める色を選びます。先日、彼の友人でペーパースクリーン(版画)の製作をしている大場さんという人にお会いしました。私にとっては新しいジャンルのアートでしたが、チャーリーの頭の中は我々の作った住空間にペーパースクリーンのディスプレイが浮かんでいたようです。近々、チャーリープロデュースで展示会を催すことになったようです。是非足を運んでみてください。

 

1999 T邸(山口県)

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2001 N邸(福岡市)

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階段

洋画の名シーンに階段が良く登場します。それはその空間の中で圧倒的な美しい存在感があるからだろうと思います。シンボリックな親柱とスピンドルで構成された重厚な階段や、柔らかい曲線の手すりとアイアンによるモダンやエレガントを表現する階段は子供の頃から目を奪われたものです。私は今、リビング、ダイニングの空間に階段を設けることが多いのですが、どこに設けるにしろ、大きな吹き抜けの中でその美しさを表現したいと思っています。広いリビングを見下ろしながら降りていく階段が好きです。それは何にも代えがたいインテリアアイテムであり、生活の中で自分達の名シーンをたくさん作ってもらいたいと思っています。

2005  T邸

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1999 M邸

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2000 U邸

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窓の表情

欧米の住宅のデザインとは窓のデザインと言ってもいいのかもしれません。ブログHでカーテンによる窓のデコレーションの話がありました。同様に外部においても窓の表情は大変重要なデザインアイテムです。一般的に全体のバランスを考えながらフラットモールをつけますが外壁がタイルの場合は窓の上下にタイルの縦貼りを用いてデザインしたり石モールを使うこともあります。エレガントに仕上げるにはウインドヘッドモールやリブモールも使いますしパインシャッターを両サイドにつけてよりデザイン性の強い窓を表現したりしています。美しい窓から黄色い灯りが漏れる夜は、一際その存在感が増します。窓の近くには内、外を問わず植物があって欲しいですし、素敵な外灯が灯っていて欲しいです。

2007 H邸

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2005 S邸

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和の空間

みんな意外に思うらしいのですが、私は「和の空間」を提案するのが好きです。日本の伝統建築が醸し出すワビ・サビを学んだ上で畳、障子、ふすま、床の間、書院等、自分流にアレンジして「和室」を作っているつもりです。そのご家族のお正月、鍋を囲む食事、ひなまつり、節句、七五三、結納、和美術品のディスプレイ等、日本の守りたい文化、生活をイメージし、一方でご主人のゴロンとできる休日、おじいちゃんおばあちゃんのお泊り、夫婦喧嘩から仲直りするまでの一時的な「ご主人の寝室」としても素敵なこだわりを持ちましょう。現代の和のテーマは「人をもてなし自分を癒す空間」です。

 

2007 M邸

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2007 K邸

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テラス

どうも日本は昔から「庭は見て楽しむもの」という感覚が強いせいか「庭の中で楽しむ」という概念が遅れているようです。DNAでしょうか?特に気持ちのいいテラスにはなかなか出会わないし(街のカフェテラスも含めて)そもそも外(庭)で飲食をするとか本を読むとかという欲求が少ない国民性ではあるのでしょうが、だからこそ我々作り手が真剣に快適なテラスをデザインして新しい楽しみを提案、提供しなければならないと思います。アメリカでは寒い日でもテラスで楽しむために外部暖炉を設けキッチンもあるのです。テラスも楽しい生活空間には欠かせないものなのです。ストリート・オブ・ドリームスの見学に行ったとき、アメリカの建築家が「我々は家をデザインするのではなく、敷地全体を家としてデザインするのです」と言っていたことが強く印象に残っています。

 

2002 S邸 

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2006 H邸

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素敵なたたずまいを目指して

オーナーと一緒にできるDアートのエコプロジェクトをみんなで考えました。家族の数だけ我々が木を提供し、オーナーと一緒に育てていきましょうという呼びかけです。この姿勢に賛同してくださる方が増えていくと、ブロック塀から生垣に、アスファルトやコンクリートから芝生に、雑草から草花へと町並みが変化し、小鳥達の鳴き声も聞こえてくるはずです。庭を手入れすること、家をメンテナンスすることは楽しいことです。落ち葉を掃いたり、芝生の水まきをしたり、草取りをしたり・・・フローリングにワックスをかけたり・・・デッキのペンキを塗ったり。「育む」ことを積み重ねることで素敵なたたずまいが生まれます。素敵なコミュニティも生まれます。

 

2000 W邸

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2階LDKとバルコニー

敷地にそれほど余裕がない時や、隣家に挟まれているとき、ロケーションを楽しみたい時など、我が家もそうですが2階リビング、キッチンを提案します。必然的に1階に個室を設けるため多くの壁で2階の広い空間を支えますから構造上、利にかなっていますし、屋根を利用してリビング、ダイニングの天井を勾配にしたり、高くしたり、大空間を作るメリットもあります。生活面では、お隣が1階のリビング、ダイニングにいる時は、自分達は2階にいるわけですし、お隣が2階で休んでいるときは自分達は1階のベッドルームにいることになります。この提案の場合ポイントは、2階へ続く階段の演出と庭に代わる素敵なバルコニーのしつらえ方が特に大切です。できればバルコニーを家の中心に配し、植物と照明が必要です。1階ではやや気恥ずかしい外での食事も、2階バルコニーでは落ち着いて楽しめます。贅沢を言えばキッチン近くにサービスバルコニーも欲しいですね。

 

2002 H邸

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1992竣工 2002撮影 M邸

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1995 K邸

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NOOK(ヌック)

アメリカの住宅でヌックという曖昧な空間の概念がとても好きです。ヌックの定義はさまざまですがキッチン近くの一画、気持ちのいい場所というのが一般的で半円や六角形などで突き出している空間が多く、朝食やティータイムによく利用しているようです。キッチンに立っているお母さんの横で子供達が宿題をする場所になったり、友達とのコミュニケーションの場所になったり、夫婦でお酒を飲む場所になったりと、楽しいシーンばかりがイメージできるNOOKという空間には夢があります。「あまり必要ないけど、とりあえず和室を一室造っておこうか」と思ってらっしゃる人は、そのスペースを是非ヌックに変えることをお勧めします。

2006 K邸

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シンメトリー(左右対称)

学生時代に「シンメトリーでバランスのいいプロポーションの家が作れるようになりなさい」と耳にタコができるくらい聞かされ、指にタコができるまで一日で何通りもの外観図を描かされた思い出があります。若い頃はそれに反発して奇抜なものや人と違ったものを盛んに追い求めていたように思います。今になって名建築と呼ばれている欧米の教会や美術館、日本の寺院仏閣を見るにつけ、建築デザインの基本はシンメトリーでありそのデザインは落ち着きと安心感、そして長い年月、人をあきさせない「品」があると実感しています。こんな話をしていると口の悪い友人に「東京で刺激を受けていた人が京都に行きたくなったら年をとった証だぞ」と言われました。?そうかもしれません。

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