量か質か?

この歳になると、仕事の関係でも、自分より若い人と話す機会が多く、自分の20代,30代と比べてしまいます。個々人で価値観が多様化しているようにおもうのですが、それは経験からくるものではなく情報から得ているようです。話すと一見知識も豊富で「頭いいなー」とおもいますし、センスも悪くない。しかし、私には、若い人から情熱や夢やギラギラしたエネルギーを感じたいとおもっています。私は、若い人によく「仕事は量か質か?」と言う質問をするのですが、ほとんど「それは質です。」とこたえます。間違いではないとおもいますが、量をこなし、経験つんだ人がその後、質について考え、語る資格があるとおもいます。まずがむしゃらに量をこなさなければ一流になれません。そしてそれは若い時期にしかできないことでもあります。自分が若い時はこんな説教じみたことを書くオヤジに反発していたと言うのもこれまた事実です。自分の子供たちも含めて若い人と話すことができると言うことはオヤジにとってうれしいことです。

おもしろいリニューアルの実例

アメリカの実態

22日、アメリカから取引先の資材会社のスタッフが訪ねてきました。いつも、輸入部材の時期や保険、金額などで激しくやり取りしている相手ですが久しぶりにお茶を飲みながらアメリカの現状を聞いてみました。失業率は相変わらず10パーセント前後らしいのですが、徐々に景気はよくなりつつあるという実感は感じられるそうです。新築建売は苦戦しているようですが、中古住宅の取引は活発に行われていると言うことでした。彼らから見た日本は今後賃貸住宅の需要、それも特徴あるものが生き残るとよんでるみたいです。1戸建て輸入住宅は、数は望めないとおもっているらしく、アパート用輸入部材を日本の賃貸業者にアピールしていくようです。彼らの言葉の中で、「輸入住宅は本物のデザインで本物の部材にこだわり続けたところが結局いきのこっているようですね。アパートは特徴あるアイデアを追い求めてるところが勝ってるようですよ。」なるほどと納得させられました。もうひとつこんな話をしていました。「アメリカ人はエコのため、節約のために小さい車に乗ろうといっても効果がない。今、ちさい車に乗ることはこんなに素敵で、カッコイイんだよ。というメッセージが必要なんですよ。」これも納得できます。政治や事業はお金が主役でやるものではなく、人は強いビジョンを語られることで、夢を持て、目標を持って生きていけるのだとおもいます。余談ですが、先日久しぶりに娘と食事をしました。忙しく働いているようです。でも仕事の話の端々に自信とプライドが感じられたことが誇らしくおもえ、「おとなになったなー。」とうれしい気分にしてくれました。

アマンリゾート

アマンリゾートという究極のリゾートホテルが、バリ、モロッコ、アメリカなど世界に何箇所かある。その地域らしさを大切に、ベストの景観にベストの建物を造り、ベストな料理を振舞うと言う。交通の便も悪い秘境的なところもあるらしいが、とにかくすばらしいホテルだと、著名人たちも声をそろえるらしい。そんな話に感化され、数年前「アマンリゾート」と言う本を買って読みました。幻想的な建物の写真にも感動しましたが、ホテルのポリシーと接客のあり方に深い感銘をうけました。100室ほどのお客様に対して200名近いスタッフで、絶妙の接客を行うそうです。お客様に、名前で話しかけ、情報をいただいた上で、デイナーの料理を提案したり、浜辺やデッキにテーブルセッテイングしたりと、提案型サプライズをさりげなく仕掛けることで、非日常の快感を満喫していただきたいそうです。最高の建物やガーデニングの空間のなかで、人が人のために癒しを提供することで、エネルギーを充電して日常に帰り、仕事で社会に貢献する。金儲けではなく、人の役に立っていることが実感できる仕事をしていることに誇りをもちたいものです。世界に10数箇所あるアマンリゾートを全て訪れることを生きがいにしてがんばります。

日常を作る仕事、非日常を作る仕事

マイケルジャクソンをはじめ、著名なアーテイストたちの多くが「自分のステージに非日常を求めてファンがやってくる。だから妥協せず、高いプロ意識を持ち続けなければならない。」と言っている。スーパースターと呼ばれる人たちは、どのジャンルにおいても質の高いサプライズで夢を与えてくれる。逆に建築、特にその中でも「住宅」を作るという仕事は、まさに人の日常を作る仕事であるわけだが、なかなか奥深くおもしろい。短時間で強烈なパフォーマンスで人を酔わせるのではなく、長い時間飽きられず、愛され続けられることが大事で自分の歴史を詰め込む器のようなものだとおもいます。そのためにも美しい家をつくるべきです。アーチストが豊かな生活の「特効薬」とすれば、「住宅」は素敵な人生をあゆみつづけるための「漢方薬」だとおもいます。自分と共に年を重ねることで「愛着」が生まれます。どちらも提供する側はプロとしての創意、工夫が必要で、努力し続けなければなりません。ちなみに、今年自分が作った最初の作品が30年目を迎えます。これからは、新しい作品を作る喜びと、昔作った作品を検証する楽しみが味わえます。時間を見つけて,30年たった家を1軒ずつお邪魔してオーナーと語らいたいものです。思いもかけない話が聞けそうで、ワクワクします。これからの時間が本当の住宅の勉強なのかもしれません。お金には苦労続きですが、この仕事は気に入ってます。

久しぶりの雪景色

急勾配屋根のいいデザインの住宅は、雪景色がよく似合います。雪で大渋滞の中、自分たちの作品の雪景色を楽しみながら、出社しました。レンガタイルの外壁と緑の植栽は特に雪化粧が素敵です。夜これに窓からの白熱灯の明かりが加わると最高です。「ホームアローン」の映像が頭に浮かんできます。アメリカで雪化粧した夜の住宅街が、外灯の明かりで浮かび上がっている風景は鳥肌が立つほど美しかったのを覚えています。また、アメリカに行って新しい刺激をうけてエネルギーを蓄えたい気分です。つい1年ほど前CHANGEとかYES WE CANとかで大騒ぎをしていたアメリカより、広くて、大きくて、派手で、ベタで、わかりやすいアメリカンドリームを追いかけている笑える人たちのいるアメリカが、私は好きです。「笑える」ことに夢中になれる世の中は素敵です。

デフレ

世の中、デフレスパイラルとやらで、価格破壊や新商法、今後の経済予測など、情報が錯綜、混乱しており、いまだに迷うだけで、落ち着いて仕事と向き合っていない気がしています。中古車をつかった10分100円のレンタカービジネスや、230円弁当などが登場している世の中で、我々住宅業界も今後の予測ができません。少なからず本質から離れた、「低価格、商業化住宅」や「ローコストのためのデザイナーズハウス」などの住宅ビジネスは成り立っているようです。経営者としての能力に欠けている私にはなかなか受け入れがたい世の中です。向上心をもっていいものをつくっていくことで人から認められ、お金をいただける時代が終わったとはおもいたくありません。人に喜んでいただく仕事がものづくりの原点であり、昔は「手に職をもっていると不況に強い。」とさえ言われてました。乗り切れるかどうかわかりませんが、安売りアイデイア合戦に参入するつもりはありません。今までプライドをもってやってきたことを守りながら、これからの住宅ニーズを探ってみたいとおもいます。また、この不況を乗り切るために人からやさしさや、思いやりがなくなっているように感じることがあります。「自分だけは損せず生き残ろう。」とするあまり、大切なものを失っているようです。自分もいろんなことを冷静に見て、考えて行動します。

2010年

あけましておめでとうございます。わたしにとって昨年は苦しく試練の1年でした。今年はそれ以上に厳しい日々が続くと覚悟しています。一日一日を乗り越えるために、力を合わせてがんばります。昨年、半ばから、お金や仕事で人に裏切られたり、誹謗中傷をうけたりして、涙する反面、働く仲間や、お客様、知人、友人から暖かい援助や言葉をもらってまた涙する日々でした。我々は住宅のデザイン、打ち合わせ、コーデイネート、現場管理をすることで、輝き、認められてきたわけですから、自分たちの存在意義を再確認して、2010年に立ち向かっていきます。皆様のご協力、よろしくお願いいたします。1日、2日の休みの間、じっくり今までの住宅作品を見ると、1邸1邸打ち合わせの過程がよみがえり、オーナーの顔や声も思い出されます。「いい家を一生懸命つくってきたなー。」と素直におもうことができます。しかし今、目の前の経理を裁くことにかなりの時間と労力を費やしています。我々は新しい人と出会い、新しい作品を作ると言う、得意な分野で勝負し、認められるように誠意をもって日々がんばります。気を抜くとすぐ振り落とされる厳しい社会情勢を乗り越えるキーワードは「全て自己責任」と言う強い気持ちだとおもいます。

NSKT_hall1tksm_living

住宅雑誌掲載

福岡の注文住宅384ページに掲載しています。たくさんの住宅会社が多くの紙面を使ってPRしているのに比べると、予算のない我々は後ろのほうにひっそりと載っています。きずいていただき、何かを感じて、お問い合わせいただければ・・・・と期待しています。この年になると、「目立つ」広告でエネルギッシュに行動して数多くの人に認知されたいと言う欲がなくなり、「わかる人に気づいてほしい。」と怠けた考えになります。アピールすることが、気恥ずかしくも感じてしまいます。でも、作ってきた作品には、自信をもっています。雑誌にしろ、パソコンにしろ、写真からでも、他とは違うことがわかってもらえるだけの作品にしあげているつもりです。いい作品をつくり、オーナーに満足していただくことが、なによりのPRだということは、今も昔も建築家の常識です。50歳を過ぎて、ある程度の作品実績を積み重ねると、それについて語り合うこと、検証することから始まる、余裕をもった家作りにあこがれてしまいます。2,3人の小さな住宅設計事務所ではそれが可能なはずです。Dアートはそこを目指します。

IMG_8272

リゾートハウスオーナー、Y先生からのご紹介

先日、事務所にお友達を連れてY先生が訪ねてくださいました。Y先生の住まいは私たちの代表作品のひとつといっていい「究極のリゾートハウス」です。穏やかな内海と白いビーチのそばに立つ家は、自然のなかに、違和感なくたたずみ、それでいて、存在感もあります。久しぶりに会うY先生から「快適に住んでます。」と言う言葉を頂き、「友達が家を建てる、というので紹介したくてきました。相談にのってください。」と言ううれしいお話がありました。建築家冥利に尽きる出来事です。お友達もドクターで、わざわざ関西からY先生の家を見にこられたようです。いい家を作って、オーナーから満足していただき、その家に訪れた人から高い評価をいただき、紹介につながることがこの仕事における「理想」の形です。この不況でみんな苦しんでいる時期に、Y先生が来てくださったことは、胸が熱くなる出来事であり、大きなエネルギーをいただきました。力不足ながら、我々の家づくりはまちがってなかったと思えたいい一日でした。

YMST2_fas1YMST_deck1

対面キッチン、アイランドキッチン

今はほとんど「台所」と呼ばれるような水周り空間がなくなり、対面キッチンやアイランドキッチンとよばれる、人が集まり、会話が楽しめる空間が好まれています。新築にしろ、リニュアルにしろ、知恵も予算も一番賭けているようです。女性にとって、好みのキッチンキャビネットに、IHや食洗機、オーブンレンジが組み込まれ、石の素敵なカウンターで、友人とお茶を楽しんだり、子供たちとパン生地をこねたり、夜ご主人とお酒を飲んだりと、自分の「城」に人が集まってくることに喜びを感じるのだとおもいます。家族の動きに目を配りながら料理ができる場所という認識でキッチンをとらえてデザインすべき時代のようです。浴室や洗面所と近く「家事動線」を考え、料理がやりやすく、収納がたっぷりで、丸見えにならないようにと言われていた時代はおわり、家の中心にみんな集まる居心地のいい場所としてキッチンを進化させる必要があります。その方法はキッチンは空間としてとらえず、リビングやダイニングなどのグレートルームのエリアのひとつと考えるべきでしょう。アメリカやカナダのキッチンキャビネットが、リビング家具としてのデザインが完成されているのもその考え方によるところが大きいとおもわれます。対面キッチンやアイランドキッチンに立っている時の女性がきれいに見えるのは私だけでしょうか。

SCAN0623_001SCAN0624_001