2012年5月6日の記事

理想の築22年

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八幡西区で22年前、まだまだ経験も乏しい中、建てさせていただいたN様の建物は住宅ではなく、店舗です。久しぶりに訪れましたが、ここは、店舗としても、建物としても進化し続けています。きれいに、使いこなしてあり、心ある人が心ある監理をするとこれほどまでに素敵に維持できるのだということを証明してくれてます。お店の輸入小物雑貨のディスプレイも魅力的です。土足なのですが、ムクのフローリングは味わい深く、ドアやケーシングなど、オイルステインは重厚です。特に塗装への認識が美しく保つ秘訣のように感じます。今の日本の家は「メンテナンスフリー」・・・・・塗装や左官をほとんどなくし、手作業すらなくし、クレームやメンテナンスを排除しています。なるべく工場でつくる「家」という商品です。これは作ったときが一番よく、どんどんボロになっていくわけです。味とか、経年変化とか佇まいとか、文化的なものを廃棄しているとしか思えません。

ついカメラを向ける家は、工業化のにおいがするものでなく、地中海の幾重にも塗り重ねられた白壁のふるい家であり、つまれたレンガが古くなり、年月が作ったブリティッシュであり、住む人たちが好きなカラーリングにそめた、アメリカの家だったりするのです。日本も職人の業が見え、歴史を重ねたものに目を奪われます。時代は変わってもその精神は受け継ぐべきだと考えます。

自分たちが携わった初期の建物で、忘れかけていた大事なこととエネルギーをもらいました。我々が訴えつづけていたものが、ここにあったという、うれしさで帰路に着きました。